タッチウエイトマネジメントとは

タッチウエイトマネジメントは、ピアノのタッチの物理的な重さ感覚を調整する技術です。

ピアノの弾きやすさはいくつかの要素から成り立っています。一つにはアクション機構が正常に調整されていること。これは整調と呼ばれる作業で調整されます。

次にはきちんと調律されていること。音律は一見弾きやすさには関係ないかもしれませんが、調律の狂ったピアノでは弾きやすいかどうか判断するのは難しいのです。タッチと音色は連動しているので、調律が狂って音色の判断がしずらいとタッチ感も不明瞭になってしまいます。

音色も重要な要素です。硬質な音色だと比較的軽く感じますし、柔らかい音色だと比較的重く感じます。これもタッチの強さと音の出方が関係しています。整音と呼ばれる作業で調整します。

タッチウエイトマネジメントは上記の調律・整調・整音が良い状態であっても、タッチが重くて弾きにくい、あるいは軽くて弾きにくい、という状況を是正する技術です。アクション機構はいくつかのてこが組み合わさった物理的・工学的機構で、動作するときの重さは元々持っています。その重さを調整するためにはその構造を把握するための物理的・工学的な知識を元にアプローチしなければなりません。

実際の作業ではアクション部品のそれぞれの重さと部品間の動作比率などを求めてアクションの現状をまず確認します。そしてそれらの要素を個別に適切に調整することによって弾きやすいタッチを実現します。

タッチの重さ(タッチウエイト)には2種類の物理現象が重なり合っており、それらを個別に把握して最終的な個別要素の調整量を判断しなければなりません。

一つはアクションをてこに見立てた時の鍵盤手前で必要なおもりの重さ(バランスウエイト)で表示される静的な重さです。釣り合わせるためのバランスウエイトが重ければ重いほど、実際に弾いたときにより力が必要とされるので、タッチが重く感じるわけです。現在市場に出回っているピアノのほとんどがこのウエイトを基準に設計製造されています。デービット・スタンウッドによる理論や精密タッチデザインもこの指標でタッチウエイトを判断しています。

もう一つはアクションが加速されるときに発生する慣性モーメントという物理量から感じる重さです。昔から慣性重さとして認識されていましたが、つい最近まで具体的に数値化して調整するやり方は構築されていませんでした。現在アメリカではこの現象を数値化して推奨調整値を表示してくれるソフトウェアが市販されています。ただし、具体的にその性質や数値化の方法等は開示されていません。

タッチウエイトマネジメントではこの慣性モーメントを自分で計測・数値化することを重視しているのですべての方法が開示されています。なぜなら起こっている現象を自ら理解しなければ、その対策を考えることができないからです。この技術は世界で唯一そのやり方を開示した方法であると言えるでしょう。

これらの物理量を得るためにアクション部品の重さやてこ比率を規定に沿った工具とデジタル秤で計測し計算します。静的な重さはバランスウエイトを指標として、アクションの全体のてこ比率(ストライクレシオ)やハンマーの動作重さ(ハンマーストライクウエイト)などで調整します。動的な重さは換算慣性モーメント値を指標として、アクション部品間のギアレシオ、ハンマーの動作重さや鍵盤鉛の位置などを調整します。

弾き手の打鍵力は体格や経験によって異なるため、それぞれの弾き手にとっての快適なタッチウエイト感覚は同じではありません。タッチウエイトマネジメントではそれぞれの弾き手が求める最高のタッチ感を、静的な重さと動的な重さを的確に組み合わせてセットアップすることで実現します。

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ベヒシュタインアクションでのセットアップの様子

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